長床にてセミの声を想う~新宮熊野神社

投稿者: | 2019年8月29日

ずいぶん昔の話ですが、和歌山の熊野那智大社に訪れたことがあります。まあ、俗物なので神社が大きいだの、那智の滝がすごいだの、そんな通り一辺倒の感想を抱いてと東へと帰ったものでしたが。

ただ、こうして東の寺社を訪れますと、やはり規模感というところでは全体的に西に軍配があがるのは仕方がありませんね。日本の神社の系列ベスト5は、八幡、伊勢、天神、稲荷、熊野だそうですが、総本社はみんな西日本にあります。

 さて、今回はその5位にランクする熊野神社のなかで、会津の喜多方市にある「新宮熊野神社」に参拝したお話です。ここの神社のウリは何といっても、国指定文化財である長床(ながとこ)。現在あるものは再建を重ねているのですが、もともとの平安の寝殿造は守られています。平安の会津ここにアリですね。

喜多方市に鎮座する新宮熊野神社
新宮熊野神社の長床。左は樹齢800年以上になる大イチョウ

入口にスリッパがあるので、まあ、あがってよいのだろうと、人気(ひとけ)もないままそろりと足を前にだして、長床の中央へ。参道のそばにあった石碑には「修験社の道場として興盛を誇った」なんて書いてあるものだから、何となく偉そうというか、厳かな気持ちになってあたりを見廻しましたが、特段天啓が降ることもなく粛々と写真だけ撮りました。

それでも一つご利益が。当日は各地で猛暑。気象庁では「命の危険」との呼びかけで、ここ会津も例外ではなかったのですが、長床のなかは不思議とひんやりとしていて、緑の風が流れ、ふだんはあんなにも騒がしいセミの鳴き声も何かにくるまったかのように柔らかに通り過ぎます。本当は、ここでもう少しいればよいのでしょうが、悲しき現代人。早々に切り上げて帰途につかなくてはいけません。

どことなく厳かな長床内
どことなく厳かな長床内

この拝殿としての長床がある会津の新宮熊野神社。「前九年の役」の陸奥征伐を発端に、「後三年の役」を経て、寛治3年(1089)にこの地に完成をみたそうです。会津の熊野信仰の本山ともいうべき存在でしょうか。もちろん、そういうには西日本の名だたる神社と規模としてあまいかもしれませんが、大切な人とひっそり訪れるのには格別なところかも。
ただ、樹齢800年を誇る大イチョウなどがあり、紅葉の季節はここも大賑わいとなるでしょうから、また違った新宮熊野神社の顔がみられるでしょう。その景色にも立ち会いたいです。

熊野神社本殿。中央に新宮、右が本宮、左が那智

境内には県指定文化財の3棟の熊野神社本殿、国指定文化財の銅鉢を含めた文化財が置かれた宝物殿もあります。この宝物殿には、『喜多方市史』で「新宮熊野神社一ヵ所をとっても、喜多方市の彫刻を語るのに十分な程である」といわしめるものがあるので、余裕がありましたら下調べしてからご覧になるとよいかもしれません。もろもろ『喜多方市史』に紹介されています。境内の広さはそれほどでもないのですが、喜多方駅から車で10分、入口の隣には休憩所もあるので、気軽に来られるちょっとした博物館も兼ねた神社です。

恒例の食事タイムは、神社の近くにあった「風月庵」の天ぷらそば。冷たいつゆとあたたかい鳥だしのつゆと二つあって、どうそばを配分したらよいかまごまごしながら、しっかり野菜も摂れました。ちなみにこんな夏でも、あたたかいつゆはなかなか乙なものでした。

※このブログは、会津若松市在住の知人からの寄稿です

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